い「一休が 開眼供養 地蔵院」

いっきゅうが かいげんくよう じぞういん

 「一休(いっきゅう)」とは、とんちで有名な”一休さん”のことです。

 ここで、関宿に伝わる昔話をひとつ。

 関の宿場に一体のお地蔵さんがまつられていました。たいへん汚れていたため、里のものが集まって体を洗い清めていた時一人のお坊さん通りました。これが一休和尚でした。せっかくなのでと里の者が地蔵さんの開眼供養(仏さんに魂を入れる行事)をお願いすると、一休和尚は快く引き受けてくれました。

 引き受けてくれたはいいものの、一休和尚はお地蔵さんの前でお経(きょう)を読むのではなく、「釈迦(しゃか)はすぎ、弥勒(みろく)はいまだ出(い)でぬ間の かかるうき世に 目あかしめ地蔵 」と歌を詠み、衣の裾をまくってお地蔵さんに立小便をして行ってしまいました。

 里のものはカンカンに怒って、後からやってきた別のお坊さんに開眼供養のやり直しをしてもらいました。そしたらその夜、里の者が熱にうなされ「せっかく名僧のありがたい供養で目を開いたのに、やり直しなど迷わせるようなことをするのか。すぐにやり直せ。」と口走りました。

 里の主だったものが相談し一休和尚を追いかけてやり直しをしてもらうことになり、早速に後を追ってやっと桑名の宿で一休和尚に追いつきました。一休和尚にいきさつを伝えると、「今さら関まで引き返すことはできないので、この私の下帯を持って帰ってお地蔵さんの首にかけ、私が読んだ歌を3回唱えなさい。」と教えてくれました。

 里の者が関に戻り、一休和尚に言われたとおりにすると、熱でうなされていたものは元通りの元気な姿に戻りました。関の地蔵さんが麻の布を首に巻いているのはこの時からなんです。

 この昔話の主役”一休”は、室町時代の臨済宗大徳寺派の僧「一休宗純(いっきゅうそうじゅん)」です。天皇家につながる血筋の人とされており、テレビアニメ『一休さん』でもそのように描かれていました。テレビアニメの一休さんはかわいらしい子ども時代のお姿ですが、数々伝わっている面白い説話からは、決して型にはまらない常識破りの人物像が浮かんできます。ですから逆に、関の地蔵さんのこの昔話も「然(さ)もありなん」といったところです。

絵札 関地蔵院本堂 地蔵菩薩が安置されています

そこで、「続く七七」
「首に巻かれた 布の始まり」
(くびにまかれた ぬののはじまり)
です。


『関宿かるた』続く七七

「一休が 開眼供養 地蔵院
 首に巻かれた 布の始まり」