つ「九十九折 朝早立ちの 鈴鹿越え」

(つづらおり(れ) あさはやだちの すずかごえ」

 “鈴鹿越え”とは、東海道五十三次の箱根(神奈川県箱根町)と並ぶ難所のひとつ“鈴鹿峠”のことで、鈴鹿峠を越えると近江国(おうみのくに)に入ります。

 “九十九折(つづらおり(れ))”とは、山を登る坂道がジグザグに折れ曲がっている様子を言います。“九十九”は実際に曲がっている数ではなく、“たくさん”の意味です。

 関宿から鈴鹿峠に向かう街道は、坂下宿を過ぎるまでは鈴鹿川に沿った緩やかな登り道ですが、片山神社(「鈴鹿権現」)からは高低差のある山腹を登る急な坂道になっています。このあたりが“九十九折”と言われるところです。

 東海道を旅した旅人は、峠の山道で日が暮れることがないよう、十分な時間的余裕をもって峠に向かいました。暗くなった峠道は、あたりに灯りがないため特に危険で、体調が悪くなっても助けを求める家が近くにはなかったためです。

 逆に、夕刻が近づくとその日の峠越えはあきらめ、峠の手前で早めに宿を取りました。関宿や坂下宿が賑わったのは、鈴鹿峠を控えていたことも大きな理由のひとつでした。

 関宿の旅籠に一泊して十分に休息を取った旅人は、朝早くに旅籠を立ち、昼のまだ明るいうちに鈴鹿峠を越えました。鈴鹿峠から西は、土山宿までなだらかな下り坂が続いていました。

 旅人を苦しめた“鈴鹿越え”の東海道は、現在はウォーキングを楽しむ人たちでにぎわっています。一方、現代の東海道は国道1号として整えられ、峠を車で越えることができます。しかし、車の道も曲がりくねった”九十九折”で、難所であることに変わりはないようです。

絵札 鈴鹿峠への九十九折の道

 そこで「続く七七」「近江の国へ 山道険し」
(おうみのくにへ やまみちけわし)です。


『関宿かるた』続く七七

「九十九折 朝早立ちの 鈴鹿越え
   近江の国へ 山道険し」