き「霧や風 小雨を除ける 関の幕板」

きりやかぜ こさめをよける せきのまくいた

 「幕板(まくいた)」は、関宿の町家の一階の軒庇に、幕を吊るすように取り付けられた板のことです。「霧除け(きりよけ)」とも呼ばれ、開放的なミセ先に雨露が入り込むのを防ぐためのものです。

 関宿の幕板は、長い板を横にして竪桟(たてざん)を等間隔に釘で打ち付けた形式のものや、木で枠を組み枠の間に板を挟み込んだ形式のものなどがあります。

 商売が盛んでミセ先が開放的だった時代には、雨露が入り込むことを防ぐという実質的な効果があったと考えられますが、町家の前面に格子戸やガラス戸などが取り付けられるようになるにしたがって実質的な機能は失われ、軒先の飾りとしての意味あいが強くなっていったと考えられます。

 しかし、関宿の幕板には、ミセ先が暗くならないよう板に穴が開けられていたり、板の代わりにガラスが用いられているものもあって、本来の機能にあわせた先人の知恵、独自の工夫が込められています。

 さて、三重県の南部には、関宿の幕板と同様に軒先に板を取り付ける「軒がんき板」と呼ばれるものがあります。これも、ミセ先に雨露が入り込むのを防ぐためのものと考えられますが、関宿の幕板が庇桁の下(軒先より少し内側)に取り付けられているのに対し、「軒がんぎ板」は軒庇の垂木の先端に取り付けられている点が異なっています。これは、山間にある関宿に比べ風雨が強かったことが影響しているのではないかと考えられます。

 関宿の幕板は、その本来の機能は失われたものの、関宿が旅人で賑わっていた時代を偲ぶことができるとともに、連続性のある美しいまちなみ景観を演出する重要な要素でもあります。

絵札 関宿の幕板は軒先より少し内側に取り付けられています。

そこで、「続く七七」は、
「山間に住む 先人の知恵」
(やまあいにすむ せんじんのちえ)
です。


『関宿かるた』続く七七

「霧や風 小雨を除ける 関の幕板
  山間に住む 先人の知恵」



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「窓付きの “幕板”」